みやざき眞のくるくらし

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必要としてくれるひとたちのこと

自分の思い通りにするために、強引に引き寄せようとすると、うまくいかないことが多々あります。

 

動物でも植物でもものでも思想的なことでも、対峙する相手あってのことであれば、当然ですね。調和しないと、溶け込むことはできません。

 

木と向き合う時も同じ。

木取りや成型をするとき、我を通し過ぎないよう、できるだけ寄り添うよう、心がける。

 

その"木に寄り添う" ということに特に重きを置いたものとして、『結木(ゆいぼく、ゆいもく)』という作品をつくっています。

 

置いて、みて、かいで、触れて、握りしめ、感じる。

それだけの木のオブジェ。

 

この度参加させていただいた、阪急うめだ本店"大阪のものづくり"に向け制作した結木たちは、その前の出展時に全て売り切れてしまったため、ひとつだけ、心を込めてつくって持って行きました。

 

その際に心に残ったエピソードをひとつ、紹介させてもらいます。

 

***

 

初日。

棚の中央にひとつ、鎮座させた結木。

たくさんの方が「なにこれ?」「きもちいいー!」「きれいですね〜。」と、笑顔で握ったり触れたりしてくれる中、ひとり真剣な眼差しで入念に握りしめる小柄な男性がいました。推定60歳台のFさん(仮名)。とても、印象的な佇まい。

 

二日目。

お昼過ぎにFさんが現れ、結木を握りしめる。

近くに立つぼくや他の作品には目もくれず、無言で、握っては置き、手をさすり、また握る。何度も繰り返し繰り返し・・・。

 

「昨日も、来ていただきましたよね?」と、声をかける。

 

『はい。気になって。』と一言。

一礼し、去っていく。

 

その日の夕方。

その結木は、他のお客様が気に入っていただき、最終日までに取りに来られるお約束をし、取り置きとなる。

 

三日目。

Fさんは現れ、同じように結木を握る。

裏に貼った「売約済み」の文字を見つける。

 

「昨日、気に入ってくれた方がおりまして、ご購入されることになったんです。」

 

『はい。そうですか。』

 

心がチクンとなる。

 

Fさんはその後も、見つめてはウロウロし、また見つめる。

 

"これ(結木)を必要としてるひとたちが、たくさんいるよ。"

 

友人のことばを思い出した。来年の春に、結木だけの展示会を提案してくれた友人だ。

 

このひとのために、つくりたい。そう、素直に思った。

 

しかし会期中は毎日、百貨店売場に在店しないといけなかったため、その間新たにつくるとなると、睡眠時間を削るか。いや、身体の疲労を考えると厳しいか。

でも・・・。

 

「もしよろしければ、ですが・・・。同じものはつくれないのですが、三日後までに、ひとつつくって持ってきます。見にきてていただけますか?」

 

気付くと、そう声をかけていた。

 

『そうですか。ありがとうございます。実物を見て、判断したいです。時間はあるので・・・。無理させてすみません。ありがとうございます。』

 

聞くと、電車で40分くらいかけて毎日来てくれていたとのことだった。

それから二日間、Fさんは現れなかった。

 

六日目。

午前中はヨメJに売り場に立ってもらう。

Fさんの握る姿をイメージし、前日帰宅後から木材を選び、木取りし、切削。完成したものと、予備として二つ、異なる雰囲気の結木計三つを仕上げて昼に持っていった。

 

Fさんが現れ、三つ全てを順番に、握り比べる。丁寧に、何度も、何順も。

 

『これ、ください。』

 

あの、結木だった。

 

「ありがとうございます。これは、木目に寄り添いながらですが、お客様の握る姿を思い出し、イメージしてつくったものなんです。」

 

『とても嬉しい。良いものに出逢えました。ありがとうございます。ありがとうございます。』

 

思わず、泣きそうになった。

 

最後は、お互い何度も頭を下げ、お別れをした。

 

その後、取り置きされていたお客様もご来店し、購入された。

 

 

 

"これを必要としてるひとたちが、たくさんいるよ。"

 

 

再度、友人のことばを思い出す。

 

幸せな仕事をいただき、ありがとうございます。

 

近所の神社にそう、感謝の祈りを込めて参拝し、今日も仕事に精を出す。

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